ページの本文へ
こんにちは!先輩

こんにちは!先輩

長島由紀子先生
下関医療センター 乳腺・甲状腺外科部長

「人生、予定通りには進まない」

 JCHO下関医療センターの乳腺・甲状腺外科の長島由紀子、医師になって20年目。山口大学第二外科に入局し、はじめの5年間は消化器一般外科を研修、6年目から乳腺外科を専門にし現在に至る。2年目の夏に同じ科の同級生と結婚、子どもはいない、犬4匹と同居中。

 このページを見ている皆さんには、夢や思い描く将来の像があるでしょう。おそらくここを見ているということは、妊娠・出産・育児をして、仕事と家庭を両立させて、などと夢膨らませ、サポート体制はどうなっているのか、復職はスムーズにできるのか、そもそもいつ頃の出産がいいのか、大学院は?留学は?そんなことも気になるでしょう。そしてこの「こんにちは!先輩」を見て、先輩方のキャリアから自分の将来像を描いてみたりすることでしょう。そのキャリアモデルには、残念ながら私はふさわしくないかもしれない。なぜなら子どもがいないから。結婚はしたけど子どもはいない。義両親はすでに二人とも他界したためこれから先の介護の心配もない(実父はいるけれど、姉が近くに住んでいる)。仕事をする上では、時間的にも金銭的にも仕事を第一に考えられるわけで。しかも夫は私の仕事を理解し応援してくれるので、研究会だろうが学会だろうが自由に行けるわけで。

 だけどそんな私でも皆さんにお伝えできそうなことがある。

一、
人生、予定通りには進まない。思い描く将来像とは違ってくる。どんな状況になっても自分を磨いていれば、おのずと良い選択肢が見えてくる。
二、
予定通りいくように努力はするけど、予定通りいかなかったときにも「ま、いっか」と現実を受け入れる。現状を受け入れ、予定を随時変えてしまえば「うまくいった」と思える。
三、
誰一人として同じではない。もちろん先輩の話を聞いて自分の将来像を描くのはとても大事なこと。だけど、先輩と自分は違う、時も、人も、場所も。誰かの真似ではなく、自分だけの道を切り開いていく勇気を。
四、
仕事をセーブするのはいつでもできる。まずはいち早く一人前になり、自分の専門を磨き、自分にしかできない技能を備えること。求められる医師になること。

 私の「予定、理想、夢」と「現実」を少しだけお話ししましょう。

 小学生のころ、実はスチュワーデス(キャビンアテンダント)になりたかった。これはテレビドラマの影響で。でも身長が153cmまでしか伸びなかったので断念。とりあえず英語が喋れて国際的な仕事をする人になりたいと予定変更。高校1年生の時アメリカ留学を希望し、当時見つけた奨学金制度で1年間留学ができる試験を受けるも不合格となり断念。

 高校2年生の春、ここで第一の事件、母親に乳癌が見つかった。ここから医師になりたいと強く思いはじめる。国際的な仕事から医師に予定変更。結婚して子供を3人くらい産んで、実家の近くに住んで両親のサポートを受けながら仕事をする、そんなイメージを漠然と描く。

 しかし、母の乳癌は肺や骨に転移し、大学5年生の時第二の事件、母他界。この経験から乳癌の診療に強い関心を持つ。それと同時に、母親がいないため、姉が里帰り出産をしないと聞き、そうか、私は子育てに母親の援助はもう受けられないんだと実感。

 さて、卒業が迫った医学部6年生。山口大学の乳腺を専門に診るのは第二外科。どう考えても外科医と家庭の両立は無理だろうと思った。しかも第二外科にはそれまで女性入局者はゼロ。どうしようと困っていたところ、岡正朗教授と丹黒章助教授に入局を快く受け入れていただき、男の巣である第二外科に飛び込んだ。同級生の彼(その後結婚して今の夫)も同じく第二外科に入る予定だったので、それも心強かった。

 入局当初は、4-5年研修してある程度一人前近くなったら妊娠、出産、共働きで家族のサポートは少ないから子供は1人、いや、可能なら2人欲しいな、と思っていた。4-5年経って、そろそろ子どもを、と思ったらすぐにできると思っていた。しかし、そう事はすんなりとはいかず第三の事件、子供ができなかった。子どもができたら少し休む、そのためにまずは早く一人前に、と進んでいるまま、時は流れ、今に至るのだ。

 現在、仕事は総合病院で乳腺外科医として責任ある仕事をさせてもらっている。20年目の今も、今後やりたいこと、できるようになりたいことも多々あって、非常に充実している。研究会や学会にももっと参加したいと思う。ここで思うのは、外科を選んで良かったなーということ。母の病気をきっかけに一番関心を持った乳癌の診療。先に「家庭との両立のしやすさ(イメージ)」という理由で別の科を選ぶことなく、外科を選んで良かったのだ。そう、するつもりだった子育てがないのだから。予定というものは狂うものなのだ。

 今、我が家は夫婦2人とミニチュアダックス4匹とで暮らしている。休日には犬と遊びに出かけたり、サッカー観戦に行ったり。年に1度の夏休みは南の島にダイビング旅行に行くのが楽しみだ。プライベートを楽しむために仕事を頑張る。だから仕事も効率を考え、充実している。若い頃に思い描いてたのとはちょっと違ってきたけれど、とにかく今、仕事も家庭もうまくいっている、幸せだと思う。

プロフィール

現職
下関医療センター 乳腺・甲状腺外科部長
出身地
山口県周南市
出身大学
山口大学
卒業年
1996年