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こんにちは!先輩

こんにちは!先輩

金子淳子先生
金子小児科院長

「ガラスの天井~先ず隗より始めよ」

 アメリカの次期大統領にトランプ氏が選ばれたことを機に「ガラスの天井」論が度々取り上げられています。私見ですが、ダイバーシティが声高に謳われている今の時代にあっても、医師という職業については、女性であるが故に選択の範囲が狭められることが依然多いように思います。

 私自身が出産した20年前は、産休はあっても育休がないのが当たり前でした。頼れる実家もなく、ベビーシッターに子育てを委ねました。今では母子相互作用やアタッチメント、基本的信頼感を偉そうに語っていますが、自身の子育ては非常に不甲斐ないものだったと自省しています。それでも働く場に戻ることは、子どもとだけ向き合う生活に少々くたびれていた自らに活力を与えてくれました。1980年頃から知られるようになった「産後うつ」は、職場復帰を機に症状が軽減することがしばしばみられます。社会のなかで自分が自分として生きること、「こうありたい」と願う生き方を選択できることは、男女を問わず誰しもに必要なことなのだと思います。

 その後、子どもが家庭内保育から集団保育へと移行する時期を迎え、勤務医を辞める決断をしました。集団保育は子どもにとって欠かすことのできない成長への過程です。子どもが急病の時に迎えに行くことも、入園式や運動会に出ることも、お稽古ごとに通わせることも、新生児科医として勤務していた当時は不可能でした。このような状況は今では改善されているのでしょうか?

 開業して真っ先に取り組んだこと、それは病児保育でした。ままならなかった自分自身の子育てへの後悔からです。病児保育に携わったことを機に、小児科医の役割は、病気や疾患の治療だけでなく、子どもの育ちへの支援であり、子どもや子どもを取りまく全ての大人への支援であることを強く意識するようになりました。

 子どもが3歳になるまでは母親が育児に専念すべきという「3歳児神話」、子どもが病気の時くらいは母親が仕事を休んで看病すべきという「病児保育必要悪論」、このような考えは、まだまだ世の中に根強く蔓延っています。女性医師が出産後の元の職場に戻り、バリバリと働くためには、このような旧態依然とした考え方を、まずは医療現場の管理職(特に男性)の頭から払拭することが必要だと思います。

 私が出会ってきた若い女性医師は、皆一様にしっかり働きたいという意欲があるように感じています。しかしながら、結婚、妊娠・出産、育児、介護、さまざまなライフステージの過程で、女性であるが故に多くの壁に遭遇しています。それぞれが望む働き方を実現するためには、まずはこの「女性医師キャリア支援ネット」の活動に多くの男性医師が関わり、みんなで問題意識を共有することが必要です。その点では、頭の硬いおじさまの変化を期待するよりも、若い世代を啓発して行くほうが簡単そうです。

 先ず隗より始めよ。皆さんも自分の一番身近にいる男性医師に対して、同僚である自分たちの立場を理解してもらえるよう働きかけていきませんか。医療界におけるガラスの天井を取り去ること。これを本気で考えて行動することこそ、私たち世代での最優先ミッションだと思っています。

プロフィール

現職
金子小児科院長
出身地
山口県宇部市
出身大学
島根大学
卒業年
1989年