ページの本文へ
こんにちは!先輩

こんにちは!先輩

綿野友美先生
よしとみクリニック 院長

「人生、欲張っていきましょう」

 こんにちは、後輩のみなさん。私は山口県下関市で小児科・内科のクリニックを開業しています。元々開業する予定ではありませんでしたが、有床診療所を開設していた父が突然末期がんで倒れ、入院患者様や地域の患者様、たくさんの病院スタッフが路頭に迷いそうになり、慌てて継承しました。

 父の介護と看取り、時を同じくして同居していた祖母の介護と看取り、相続と膨大な事務処理、慣れない病院経営と何と言っても小児科医が外科の有床診療所の仕事をするというストレスに、目が回るような忙しい日々を送りました。実は私は、産後すぐ常勤復帰したものの高齢出産だったこともあり、子育てと仕事の両立に少し苦労していました。しかし、そんな事はあっという間に吹き飛ばされた数年間でした。

 この頃が一番男女の区別について考えさせられました。男性的な仕事も女性的な仕事もいっぺんに押し寄せました。弟が歯科医で一緒に継承したのですが、男性を仕事に専念させなくてはならないという雰囲気が周囲に強くありました。もちろん弟自身はいろいろ手伝ってくれましたが、介護や家事、経理などは女性の仕事という考えに自分も家族も捉われていて、自分を追い込み過ぎていました。今は、出来る事を出来る方がすればいいと思っていますので随分楽になりましたが、当時は弱音をたくさん吐きました。

 あるとき、妹が言いました。

 この世に生まれてきたからには、人生、経験出来ることは何でもやりたい。って、お姉ちゃんは昔から言ってた。人生何でも欲張りたいって言ってたよ。」

 自分では覚えていませんでしたが急に憑き物が落ちたような気分になり、以後は忙しくても納得できるようになりました。多分、昔の私はもっと違う意味で何でもやりたいと言っていたと思うのです。でも、今の人生は自分なりに欲張って生きている、と少し満足した気分になれました。

 父のおかげで小児科以外の勉強もさせてもらえました。介護と看取りは自分の死生観を見直すことになり、父や祖母にも最期まで付き添い、悔いなく送り出すことができました。子どもから大人まで診て、在宅医療で往診も始め、有り難いことに自分の専門分野の外来(てんかん診療や発達障害の診療など)も継続させてもらえています。今が一番、自分がしたかった町のお医者さんの仕事をしていると思います。子どもの世話も以前よりはしっかりと出来るようになり、一緒に手作りしたり洋服をリメイクしたり楽しんでいます。

 長々と徒然ない事を書きましたが、私は医療に従事することが出来て本当に良かったと思っています。辞めずに続けることが出来たのは周囲のサポートのおかげと本当に感謝しています。

 最近ふと実感したことがあります。

 「医者人生、実は結構長い」

 若いときは急いで選んだり、悩んで焦ったりしていましたが、やっと落ち着いた私でさえまだ、後20年あります。途中で寄り道したり立ち止まったりしても、自分が悩んで選択した人生は、きっと最後には満足出来るんだという事を実感しつつあります。

 後輩の皆さん。人生、欲張っていきましょう。男性とお互いに協力しあい、女性ならではのやりがいや醍醐味も味わいながら。

プロフィール

現職
よしとみクリニック 院長
出身地
山口県下関市
出身大学
山口大学
卒業年
1995年