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こんにちは!先輩

こんにちは!先輩

髙瀬泉先生
山口大学大学院医学系研究科法医学分野 准教授

「天職と思える専門分野に出会えるように~オリジナリティを大切に、自身で決めること~」

 こんにちは。法医学分野の准教授の髙瀬泉(たかせいずみ)です。2009年10月に着任し、週末は教授の配慮のもと自宅のある神戸に帰る単身赴任生活を続けています。

 私は兵庫県で生まれ、平成10年に大阪医科大学を卒業後、東京大学の大学院に進みました。当時、医療関連の法医解剖が増えることが予想され、当時の教授に臨床研修を勧められて、大学院に籍をおいたまま兵庫県の地元の総合病院の胃腸外科で1年間研修させて頂きました。研修医が1人だったこともあり、整形外科や産婦人科の手術にも入れて頂くなど他科の診療も経験させて頂きました。半年後には、外来や人間ドックでのエコー・内視鏡検査を担当させて頂くまでになりました。内科の先生方が心臓をご専門にしておられたので、それ以外の内科は胃腸外科の担当で、当然、ファーストコールである私はスズメバチのアナフィラキシーから誤って刺さった釣り針抜きから犬の咬傷の処置からさまざまなケースを経験しました。祖父が地元で開業していたこともあり、外科に残るか、法医学に戻るか、かなり迷ったのですが、将来の家庭生活を考慮し、ある程度時間調整に融通がきく法医学をやはり選択し、東京へ戻りました。

 大学院では、指導教官から法医解剖の知識・技術のみでなく、ご遺体へ向き合う姿勢についてもしっかり教わり、それが法医学者としての私の根幹を成していると思います。解剖室への出入りの際や解剖開始前には必ず礼をすること、これは今でも変わらず続けています。その教官は、交通事故の解剖の際には、警察署まで出向き、事故に関連した車両の損傷を自身の目で確かめておられました。こういったことは普段なかなかできないのですが、私も山口へ着任してから多数の車両が関与したケースの際にその時の経験を思い出し、実際に車両を見に行って鑑定書作成に役立てたことがありました。このように、大学院できちんとした指導を受けられたことは私にとって財産だと思います。一方、研究面では、動物実験や細胞培養なども行ったのですが、社会医学的な事柄に関心があった私は警察庁・警視庁、また、東京と大阪の救急告示医療機関のご協力を得て、日本における強かん(刑法の強姦と強制わいせつに相当)の被害者への医療者および警察官の対応について質問紙調査を実施し、その結果をまとめて博士号を取得しました。このようなテーマで学位をとることは珍しく、よく驚かれるのですが、当時の指導教官がよく口にされていた‘originality’と‘neues’を評価して頂いた結果と感謝しています。

 母校の大阪医科大学に着任してからは親子鑑定等DNAを用いた実験手法等を学び、滋賀医科大学では児童虐待が疑われるお子さんの損傷鑑定を行いました。現在、年間170件前後の法医解剖の約1/3の執刀に加え、大阪や中国・九州地方等年間20-30件の虐待疑いの損傷鑑定を受け、数件の裁判出廷も行うなど日本では数少ない臨床法医学者の1人です。

 法医学に進んだきっかけは、幼い頃にナイチンゲールの伝記に感動し、まず、看護師さんになりたいと思い、開業医であった祖父の姿を見て医師に憧れました。その一方、法律や条例等が変わる度に警察官であった父の法律の本の頁の差し替えを手伝ううち、法律や政治関係の仕事にも関心をもちました。そして、法学部と医学部のいずれを受験するか迷いましたが、先に研修等で体力が要りそうな医学部に行き、その後、法律・政治関係の勉強をしようと決めました。すると、医学部で法律にも関わる法医学という分野に出会ったのでした。

 現在、大学の仕事に加え、大阪府松原市の阪南中央病院内に設置されている性暴力救援センター・大阪(SACHICO)の理事を拝命し、主に学術部門から運営等にできる範囲で関わっています。

 私も卒業当時、大学病院の外科で「オンナはいらない」とはっきり言われましたが、その後の研修病院では分け隔てなく、1人の研修医師としてご指導頂き、結局、外科には進まなかったものの、その時に得た経験は今でも貴重です。

 これからさまざまな選択ができる皆さんには、どんなことでもいいので自分にしかできないこと、私だからこそできること、そういった核となるものを1つ見つけてもらえたらと思います。また、自分で決めることを改めて大切にして欲しいです。実際に働いているといろいろなことがありますが、そういった姿勢でいると、何があっても大きくぶれることはないと思います。

 私は、法医学者という仕事を天職だと思っていますが、事件や事故と関連することが多く、そうでない場合も突然死などご遺族の悲しみに触れ、正直、辛いことばかりです。しかし、幸い、三方を海に囲まれた山口県には美味しいお魚や地酒がありますし、宇部には映画館もあります。

 皆さんもそれぞれに最適なリフレッシュ法を見つけて、それぞれのペースで生涯現役として続けられ、いつか天職と言えるような選択をされるよう願っています。

プロフィール

現職
山口大学大学院医学系研究科法医学分野 准教授
出身地
兵庫県
出身大学
大阪医科大学
卒業年
1998年