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こんにちは!先輩

こんにちは!先輩

田中屋真智子先生
国立病院機構 岩国医療センター循環器内科

「5年休職して思う存分子育てした後に復職しました」

※筆者は右から3番目

 女子学生さんや医者になって間もない女医さんに向けて書かせていただきますね。私の特徴を一言でいうと「医者になって7年目に出産、子育てのため5年間休職し、その後復職して医者を続けている女医」です。循環器専門医、内科専門医、超音波専門医は復職後にとりました。今年卒後21年、主人は同じ病院で働く7歳年上の外科医。子供は高2男子と中3女子の二人。

 「え?5年間完全休職して復職?そんなことできるの?許されるの?」 そういう声が聞こえてきそうです。できる、できないではなくて、そうしたかったのです。

 私の場合、卒後6年目で結婚、7年目に出産しました。そのときは内科医として一通りの事ができるようになって仕事がようやく楽しくなってきた時期でしたが、実家は遠いし頼れる親戚もおらず、かつ「せっかくなら子供に全力で向き合いたい!」と思ったので、二人子供を産んで下の子が3歳になるまで5年間完全に休職しました。育児に専念することで医者以外の人脈や世界がグッと広がりましたし、母親としての自信と経験もできたと思います。子育てって意外に大変ですからね。何より子供たちに負い目は感じていません。やることはやりましたから。

 5年たって自分に問いかけました。出した答えは「仕事がしたい。家庭も大事だけれど仕事をする自分が好き」。それから研修医時代にお世話になった病院で復職させていただきました。5年間ブランクがあったので自分の不甲斐なさが悔しかったですし、職場にも相当迷惑をかけたと思います。でも辛かったからこそ一生懸命考え勉強しましたし、環境に合わせて自分のスタイルも変えていきながら自分の道を見つけてきました。もちろん周りの方々の理解と協力あってここまでやってくることができました。本当に感謝です。侵襲的な検査・治療から外していただき当直を免除していただきました。その代り日中にできることは何でも引き受けるようにしました。

 結婚も出産もしていないならワークライフバランスなんて考える必要はありませんよ。まずは自分がなりたい医者の姿に少しでも近づくよう、早く一人前になるよう研鑽を積むべきです。子供を授かった時に考えればいいのです。

 この仕事と育児のバランス問題に直面したとき。そのとき大事なのは「自分がどうしたいか?」です。「どうすべきか」ではない。周りは好き勝手なことを言いますが、自分のことは自分にしかわからないのです。家庭も仕事も手放したくなければ、そのように環境を整え、自分を変えていけばいいのです。シングルタスクしかできない男性に比べ、女性はマルチタスクができる能力があります。なんとかなります。仕事はやめて子供に向き合おう、自分はそうしたい、そうする自分が一番好きなんだ、そう思えばきっぱり仕事をやめて子育てを楽しめばいい。いったんやめたけれどまた仕事をしたくなったら、そうすればいい。子供を産んだけれど、私は子育てより仕事がしたいと思うなら、そうすべきです。「子供が可哀そう」なんて外野の声は無視。お母さんは嫌々私を育てている、と子供にはわかってしまいます。自分を偽る人を誰が信用してくれるでしょう。

 組織に貢献することも、税金で医者にしてもらった恩返しも、社会人として周りに迷惑をなるべくかけたくない、それももちろん大事だと思います。しかし、一番大事なのはあなたがどうしたいかです。わがままに振る舞え、ということではありません。むしろ逆。迷惑をかける分、誰もがやりたがらないことを引き受けなくてはならないかもしれない。頭を下げて回る、言いたいことも飲み込む、馬鹿にされる、そんな思いをするかもしれない。環境を整えると言っても、他人は変えられませんからね。自分で環境やシステムを作り出す必要もあるでしょう。それでもあなたは自分の決断を全力で守ること。ひいてはそれがあなたの自信になり、魅力になります。あなたが幸せでいることが、周りを幸せにするのです。

 そのためにも専門を選択するときに一番大事なのは「ときめきを感じるか?」これに尽きます。辛いことがあっても、好きでやっていることは続けられますし、向上したいと思えます。私の場合、内科を選ぶことに迷いはありませんでしたが、スペシャリティを決めるときに悩みました。QOLを考えて消化器内科医としてポリペクやERCPをやっていたこともありましたが、学生実習でみた冠動脈造影・動く心臓を見たときの感動がどうしても忘れられず循環器内科を選びました。「動く心臓フェチ」を自認しており、多くの心臓と出会わせていただく今の仕事に感謝しています。「トップレベルの医療を」と高い志を持つ当院の「ハートチーム」の一員に加えていただいて仕事もやりがいがあります。

 これまで仕事で嬉しかったこと、たくさんあります。「先生の顔を見るだけで体調が良くなる」と患者さんに言っていただくのも嬉しいです。とある同僚男性医師に言われた「先生が羨ましい。だってオンリーワンの存在だから」や、後輩女医さんに「先生は何でも手に入れていて憧れです」と言っていただいたのも嬉しかったですね。でも、こう見えても結構気を使っているし、手に入っていなくて悔しい思いをしていることもたくさんあるんですよ。努力や辛い顔は見せませんけれどね。「今日のハンバーグもめっちゃ美味い!」「できたてのアップルパイは最高~」と子ども達がはち切れそうな笑顔で言ってくれるのもかなり嬉しいです。ちなみに子供たちはとってもかわいくて頼もしくて、かけがえのない宝物です。

 私はこういう道をたどってきたので産んで育てる事しか書けませんが、結婚しない選択、結婚して産まない選択、産んでも自分では育てない選択、いろいろあると思います。それも全部「自分がどうしたいか」次第。一番大切なのは自分。自分の心の声をきいてあげてくださいね。 男性への対応の仕方とか、人間関係のあれこれとか、本当の「女子力」ならぬ「女医力」とか、若い女医先生にお伝えしたいけれど紙面に書けない大切なことはまだまだあります。興味のある方は是非、当院へ遊びにお越しくださいませ。

プロフィール

現職
国立病院機構 岩国医療センター循環器内科
出身地
香川県高松市
出身大学
東京医科歯科大学
卒業年
1994年