Medical Student

= わたしは医学生 =

Interview

石川 杏さん 山口大学 医学部医学科3年

Interview

石川 杏さん 山口大学 医学部医学科3年

わたしも医学生

わたしも医学生

 実家に「山口大学医学部」からの封筒が届き、念願の合格通知を手にしてから早2年。1年生の頃は、書類やメールに「医学部医学科」と記入するたびに感慨にふけっていました。最近は「医学生」であることにもすっかり慣れて、怒涛の試験ラッシュに立ち向かっています。覚えなければならないことの量が多く、大変な日々ではあるものの、したい勉強ができる幸せを噛みしめながら頑張っています。

 「原稿を書きませんか?」とのご依頼をいただいて、熟考したのちに寄稿させていただくことを決めました。「わたしは医学生」はリレー形式で行われているようです。私を推薦してくださった方、すてきな機会をありがとうございます。医学部受験を決意した経緯と、現在の学生生活について書かせていただきます。

 私は地元の公立高校を卒業後、一度他大学の農学部に進学しています。小学生の頃から医師という職業への漠然とした憧れがあったため、高校でも医学科を志望しました。成績が少し伸び悩んでいた高3の夏、先生のはからいで先輩医学生のお話をうかがう機会がありました。当時の私はその方の志の高さに感銘を受け、「このような人が医師になるべきだ」と感じるとともに、自らを顧み「こんな曖昧な動機で目指していい職業ではない」と考え、志望校を変更しました。今思えば時期尚早でしたが、模試のD判定を受け止め続けるのに耐えかねた、というのも大きな理由でした。一度くじけた経験を持つ身としては、結果がどうであれ諦めずに頑張り続けられた方々を本当に尊敬します。

 無事合格した進学先では、入学時点ではコース分けがなされていないこともあり、様々な研究テーマや就職先の選択肢がありました。そこで初めて医療者以外の道を探し始めたのです。しかし、ニュースを見ても講義を聞いても、関心が向くトピックはやはり医療でした。そうした情報に触れ、生き方を考える中で、やはり自分は「医療現場で自分の心身を使って人のために働きたい」とはっきり思うようになりました。漠然としていてよく見えなかった動機が、一度「医学部受験」というレールから外れることにより、明確になったのだと思います。特に理由なく医学部に入学しても、すばらしい医師になられている方は多くいらっしゃると思います。しかし、やや過剰に責任感の強い私にはこの回り道が必要でした。

 様々な準備をして、受験勉強に着手したのは9月でした。当時のセンター試験まで残り4ヶ月半です。この短期間で合格できたのは、家族、高校の先生方、予備校の職員の方、大学の友人など、たくさんの方々のサポートのおかげだと確信しています。受験勉強だけに集中できる環境は当たり前ではないのだと再認識しました。そうはいっても相当無理をしたため、医学生としての生活は、再受験で酷使した心身をゆっくりと回復させながらのスタートでした。

 私たちは2020年、コロナ1年目に入学した学年です。完全オンライン授業の期間は、約束しなければ誰とも会わないで一日が過ぎていきます。放っておくとすぐに鬱々としてくるので、知人のところを訪れたり、SNSで仲良くなった同級生と会ったりと、意識的に人と会うようにしました。もともと一人で本を読んでいるのが好きな性格でしたが、「自分にはある程度生身の人との交流が必要なのだ」と分かったことは、自粛生活で得た大きな収穫でした。

 2年生では、冒頭でも述べましたが、やはりテストが大変でした。ここでも友人たちの力を借りて、教えあったり励ましあったりしながら乗り越えました。また、2年生では医学部キャンパスに移るため、医学系の研究室へ行きやすくなります。時間を見つけて、友人たちと興味のある講座の見学に行きました。「いつでも遊びに来てください」とのお言葉をそのまま受け取り、今では2つの講座で継続的にお世話になっています。

 脳神経内科の実験室では、放課後や休日を利用して細胞の培養を続けながら、細胞を使った実験をさせていただいています。「ヒトの細胞を育てる」というのが私にはとても楽しく、たまにコンタミさせて悲しくなりながらも、ペットを飼育している気持ちで続けています。

 また、犯罪に関する医療に関心があることや、先生方がとても魅力的だったことから法医学講座にもお世話になっています。この春休みから、アルバイトとしてこまごました作業をしながら、解剖や虐待について勉強させていただいています。特定の分野での専門用語を知ると、少しその世界の仲間入りができた気分になります。卒業後は臨床医として働きますが、法医学の知識を身に着けることは、将来の臨床でもとても役に立つのではないかと感じてます。

 もし、気になる講座やお話したい先生がいるのであれば、ぜひメールを送ってみてください。勇気を出して送っても返信がないこともありますが、どうやら大学のメールの不具合で届いていない場合や、ご多忙で先生が見落とされている場合も多いようです。めげずに何度もメールを送ってみたら、きっと歓迎してくださるはずです。学生の権利をしっかり使って、充実した学生生活を送ってください。私もあと4年、ここ山口大学で存分に医学生を全うします。