Medical Student

= わたしは医学生 =

Interview

藤本梨夏子さん 山口大学 医学部医学科6年

Interview

藤本梨夏子さん 山口大学 医学部医学科6年

初心に戻り自分の気持ちと向き合う

初心に戻り自分の気持ちと向き合う

 はじめまして。山口大学医学部医学科6年生の藤本梨夏子と申します。この度は、「わたしは医学生」の執筆という貴重な機会をいただき、大変嬉しく思っております。拙い文章ではありますが、私なりにこれまでの経験からの今の考えを綴りたいと思います。

 私は幼い頃から医師になることが夢でした。物心ついた頃から母や私が病院に通院しており、医師という存在が身近にあったことが大きな要因だと思います。ただ、親族に医療関係者がいるわけでもなく、大学進学をしている身内もほとんどおらず、医師になるのは夢のまた夢だと思っていました。高校生になってもその気持ちを抱いたままで、ぼんやりと日々を過ごしていたのを覚えています。決断をしたのは高校3年生のときでした。いざ進路をどうするか考えたときに、やはりまず思い浮かんだのはお世話になった医師である先生方の顔で、医師以外の職業に就いている自分を想像してみても何故かしっくりきませんでした。高校の先生の激励もあり、スタートは遅かったですが高校3年生から医学科への入学を本気で目指すことにして、2年間予備校に通った後に無事山口大学医学部医学科に入学することができました。

 入学してから、特に2年生や4年生のときは試験の連続で、想像を超えるとても大変な日々でしたが、不思議とこつこつと努力を積み重ねていくことができました。それは、医師を本気で目指す前の高校1年生や2年生のときの私では到底考えられないことで、自分が自分でないような感覚を抱いたこともありました。実家で暮らしており家族のサポートがあったことや、周囲の友人や医学科の仲間が部活動やアルバイトで忙しい中でも一生懸命勉強していて、その頑張りに後押しされたことが努力し続けることができた理由の一つだと思います。ただ、私自身が変わることができたということもとても大きな理由の一つだと思っています。今振り返ってみると、高校3年生から予備校生だった頃が私の人生のターニングポイントであったと思います。そしてそのきっかけは、「初心に戻ること」でした。初心というものは、今の自分より未熟な自分が考えたことでとても脆いものだと思いますが、だからこそ自分の本当の気持ちが前面に出てくると思います。過去の私は、知らず知らずのうちに自分の夢を諦めて医師にはなれないと思っていて、様々なことに対して中途半端な気持ちで取り組んでいました。しかし初心を思い出し、自分の気持ちを大切にして本当にしたいことを選択した後は、どんなに辛くても諦めず一歩ずつでも前に進んでいくことができているように感じます。

 現在はクリクラで臨床実習をさせていただいています。新型コロナウイルスの影響もあり従来の臨床実習とはいきませんが、ポリクリと合わせてかなりの時間をかけて様々な診療科の実習を経験しました。多くの先生方の働きぶりを見学したり、実際に患者さんと関わらせていただいたりすることで、どの診療科にも様々な魅力や特徴があることがわかりました。だからこそ、この時期に多くの人が悩むことは将来進む診療科についてではないかと思います。私ももれなく悩み、特にポリクリのときは診療科が変わるたびに、前の診療科もよかったけど今回の診療科もいいな、とよく考えていました。紆余曲折ありましたが、やはり興味がある、やってみたいと最初に思ったことは何かと考え直すことで、現在は希望する診療科がある程度絞られてきました。初心に従った選択をすることで、迷いが少なくなった自覚があります。そしてこれからは、希望する診療科だけでなく様々な重要な選択をもっとしていかなくてはならず、迷う機会も増えていきます。もちろん、吟味して初心とは異なる選択をした方が結果的によいことも多々あると考えているので、決断を下すときは熟考することが大前提ではありますが、岐路に立ったときは初心に戻り、自分の本当の気持ちと向き合うことが大切だと思っています。忙しい日々を送っていると目の前のことに捉われて初心を忘れてしまいがちですが、後悔しないためにも、悩んだときは立ち止まり初心に戻って選択していこうと考えています。