Interview
Interview
地域に必要とされる医師とは
地域に必要とされる医師とは
はじめまして。山口大学医学部医学科4年の山本麻紀子と申します。
部活動は山岳部に所属しております。山岳部では毎週土曜日に県西部から中部にかけての山を中心に登っています。「毎週登るほど、そんなに山なんてある?」とよく聞かれますが、年間30回強の部活で同じ山を重複して登ることが殆ど無いくらい実はあります。宇部市の山というと、宇部駅から暫し北上したところにある「霜降山」でしょうか。平日は自宅と大学の往復で気付いたら季節が変わっていたなんてこともありますが、土曜日の部活では木々の色や生き物の声などから季節の移ろいを感じることが出来、何か豊かな気持ちになれます。根が野生児である私にとって、週1回の登山はとても良い気分転換になっています。
さて、私が医師を目指したきっかけですが、実を申し上げますとはっきりとは覚えていません。ただ、物心ついた頃から「スーパードクター」など医師の姿を扱ったテレビ番組が好きでした。中でも、先に執筆されている方の中にもいらっしゃいましたが「Dr.コトー診療所」、そしてアフリカなどの発展途上国で働いておられる医師のドキュメンタリーがとても好きで、見る度に心を動かされていました。大学生になった今現在もそれは変わりません。そういう訳で、私は特定の疾患に関するプロフェッショナルというよりも、患者さんの心身に関する悩みに幅広く対応できる家庭医、総合診療医に興味を持っています。そして、将来は医療資源の不足した地域でそのような医師として地域に貢献したいと考えています。
入学当初、医療資源の不足した地域≒僻地の医療に従事したいと考えてはいても、僻地での生活についての知識はメディアを通して得たものしかなく、また僻地医療に従事する上で必要とされることは何なのかよく分かっていませんでした。そこで、僻地での生活やそこでの医療について知るために毎年開催される「やまぐち地域医療セミナー」に参加することにしています。このセミナーでは、実習やグループワークを通して僻地の環境を肌で感じたり、また、様々な職種の視点で僻地医療について知り、考えたりできます。これまでセミナーを通して、交通の便の悪さから車が生活する上での生命線になっている実情や、不便な分、地域内で助け合おうという意識の強さ、また自分で何とかしようとする頑張り屋の方が多いことなど、現地に足を踏み入れないと分からない僻地の生活事情や土地柄について知ることが出来ました。加えて医療に関しては、人的・物的資源が不足しているために地域の方も含めたチーム医療が重要視されること、地域で対処できる状態か否かを適切に判断できる診断技術が必要とされることなど、もうすぐ始まるポリクリや卒後の初期研修では学びにくい僻地医療に従事する上で大切なことについて学ぶことが出来ました。こうした気付きを得られたことに加え、実習を通して僻地医療に尽力されている素敵な先生方、看護師の方など多くの尊敬できる方と出会うことが出来ました。今回はそうした多くの方の中でも強く印象に残っており、「こんにちは!先輩」の執筆もされている萩市のむつみ診療所所長の前川恭子先生と出会った時のことを少し述べたいと思います。
私が前川先生のいらっしゃるむつみ診療所を初めて訪れたのは1年生のセミナーの時でした。入学して半年、医師の下で実習するのはこれが初めての経験でした。先生の診察を見学させていただき、まず何て楽しそうなのだろうと思いました。先生と患者さんがまるで長年の友人のように絶え間ない笑い声と共に話に花を咲かせておられ、その様子から先生が地域の方から厚い信頼を得ており、心を許されているのだと強く感じました。実際受診しにこられていた方にお話を伺うと、「先生がいてくれて本当に有難い」、「先生と話をしに来ているのよ」といった声が聞かれ、先生が地域から愛されていることを更に実感しました。そして、私も将来前川先生のように地域の方から信頼され、愛される医師になりたいと強く思い、それ以来私はロールモデルとして前川先生を掲げています。
医学生になって早4年が経ちます。今後はこれまでの座学と打って変わり、いよいよ病棟に出て実際に患者さんと接することとなります。未だこれまでに出会った尊敬する先生方の足元にも及ばない未熟者ですが、一日一日少しでもそうした先生方に近付けるように邁進していきたいと思います。そして、今後も地域に入る機会をなるべく沢山持ち、将来の糧を増やしていきたいと思います。