Medical Student

= わたしは医学生 =

Interview

山下実紗さん 山口大学 医学部医学科2年

Interview

山下実紗さん 山口大学 医学部医学科2年

医学生として未来を見据え、今を生きる

医学生として未来を見据え、今を生きる

 医学生とはどのような存在であるべきか?

 この問いについて医学生でありながらきちんと考えたことのある人は意外と少ないのではないかと思います。私がこのことを意識するようになったのは、昨年末からになります。

 COVID-19が流行り始めた昨年の春~夏頃のこと、世間は未知のウイルスに対する恐怖からとにかく医師や学者に解説を求めました。しかしながら未知であることは医師や学者にとっても同じであり、ウイルス学や感染症学の知識から考えられる「答え」を導出するしかありません。そしてその矛先は医学生にも向けられます。「医学を学ぶ者」としてどう考えるか、何が正しくて何が誤りなのかを知人・友人から聞かれます。

 しかしながら、医学生といえども学生、分からないものは分かりません。だからといって適当なことを言ってしまえば、それを聞いた側にとっては「医学生が言ったこと」として受け取られ、誤解を生んでしまいます。自分では単なる学生のつもりでも、他人から見れば「医学を専門に学んでいる人」であり、「医学においては信頼のできる人」として扱われる、それが医学生です。

 そんな医学生は社会の中でどのように振る舞うべきなのか。医学生だからこそできることはないのか。

 昨年末からWHOからも公認を受ける国際NGOの日本支部であるIFMSA-Japan(国際医学生連盟 日本)で活動を始めた私は、2021年夏に日本主催で開かれるアジア太平洋地域イベントの運営委員として、講演やパネルディスカッションを担う班に所属していました。イベント全体のテーマである“Pandemics in a Digital Era”に沿う講演をお願いするうえで、そもそも「テーマについてどのような課題意識をもっていて、どのようなアクションをとろうと考えているか」という質問を講師の方からいただき、話し合いを行ったことがありました。その時に運営委員の一人が出した意見が「変わりゆく社会を医療系学生がどのように導くかによって社会はいかようにも変われる。医療系学生の立場からどのように行動できるかが大切だ」という内容でした。私は衝撃を受けました。当時の私は、医学部に入学し、なんとなくIFMSA-Japanに所属して楽しく過ごしていただけでしたので、社会の為に自分に何ができるかなど考えたこともなかったからです。

 それからというもの、何をするにしても、「医学生として何ができるか」を考えるようになりました。考えるうえで大切なことが「知ること、理解すること」です。当たり前のことのように思われますが、実際にやろうとすると難しいことも多いです。社会問題について調査する時に、信頼できるソースに欲しい情報がない、外国の情報がなかなかヒットしないなど一筋縄ではいきません。それでも様々な社会問題や制度を詳しく知り、深く考察することは、自らの思考の幅を広げると共に日々の洞察力を高めると感じています。

 『学生だからこそ出来ることをとことんやる』これが、私のモットーです。高校1年の時に自ら打ち立てて以来、今でも変わっていません。高校生の頃は、複数の分野で研究活動を行いポスターセッションやプレゼンテーションで結果を発表したり、英語の大会に参加するために地元福岡を飛び出して東京やスペインに行ったりしました。大学生となった今では、IFMSA-Japanの活動が私の糧となっています。もちろん医学部の勉強も忙しいですが、大きな夢や野望があれば、勉強とバイトと課外活動を両立させるのは全く苦にはなりません。むしろ毎日楽しく生きています。

 このように活発な日々を過ごしている私でも1つ悩みがあります。それはキャリアパスです。幼稚園の頃に医師を志し、小児外科医を目指して勉強などしてきましたが、高校で研究活動に携わったことで研究職も向いていると感じました。その一方で、とある記事を読んでからは国際医療にも興味を持ち始め、世界中で患者の望む医療が提供できるような医療技術指導にも携わりたいと考えました。そして、大学に入って様々な制度設計について深く考える機会に恵まれたことで行政にも関心が高まり、医系技官として厚労省に入るのも一手だと感じています。どの職もとても魅力的で迷っています。だからこそ、どのキャリアパスを選んでもうまくやっていけるように準備したいと思っています。その一つとして課外活動を位置づけているという側面も実はあります。

 「良い出会いが人生を変える」という言葉をよく聞きます。確かにその通りだと思います。高め合える仲間、導いてくれる師などがいてこそ、独りでは到達できなかった景色を見ることができます。しかし、ただ出会いを待っているだけでは何も起こりません。出会いは自ら掴み取りにいかなければならないのです。幸い、インターネットによって様々な情報へのアクセスが容易になりました。私はIFMSA-Japanに入り、自ら色々な活動に参加したことで、全国そして世界の高い志を持つ仲間と出会うことができました。これからも内外の様々な活動や講演会・シンポジウム、ボランティア等の活動にできる限り参加し、自らの「つながり」「ネットワーク」を拡げていきたいと思っています。そうすれば、どんなキャリアに進んだとしても自分のやりたいことをやっていけると信じています。