はじめまして。沖縄県出身、医学科３年の坂井つぐみと申します。この度はこのような貴重な機会を頂き有難うございます。この執筆を通して、山大の良さを知ってもらいたいです。そして山口の皆さんに感謝の気持ちを伝えられたらと思います。

山口に初めて来た時の事を、先日のように覚えています。沖縄とは異なる、山々に囲まれた自然の美しさに感動しました。満開のソメイヨシノを実際に見たのも初めてで、はしゃぐ私を周囲は不思議に思ったかもしれません。山口の静かで暖かな雰囲気がすぐに好きになりました。長年の目標だった医学部で学べる喜びと新しい生活への期待で胸を膨らませていました。

恥ずかしながら私は医学部を目指してから７年目に山口大学に入学致しました。親の負担を減らしたいという思いから６年間地元の大学にこだわってきました。英語科出身であったため数学や理科の試験の範囲を一から学ばなければならず、人より時間がかるとは覚悟していました。しかし実際は面接点で苦しい思いをしてきました。今はそのようなことはなくなったと聞きますが、３浪以上の女性では面接点が200点満点中80点が当たり前の世界でした。成績開示をして合格者と比べると、面接点だけで逆転されるという経験の連続でした。だからこそ諦めきれず受験を続けてきましたが、「８０点」という点数で自分の人格を否定されているように感じ、ストレスが限界に達していました。

７年目にようやく、自分を認めてくれる場を求めて県外受験を考え、必死に大学を探しました。そして各大学の多浪女性の合格データを調べ、山口大学を見つけました。山口大学の受験では面接点がないにも関わらず、他大学より面接時間が長いのも印象的でした。ここなら年齢や性別ではなく、私の人となりを見てもらえるのではと思いました。この判断は間違ってなかったと、合格者へ送られてきた資料を見て確信しました。資料には、「山口大学には浪人生、学士など年齢もさまざまな人がいます。いろんな人と関わることで人として成長してほしい」というようなことが書かれていました。また、マタニティー白衣の貸し出しを学生にも行うとあり、医師を目指す女性が学びやすい環境が整っていることに感激しました。本当に良い大学に来たと嬉しい気持ちと、地元で医学部受験を諦めていった多浪女子の先輩方がもっと早く山口大学に出会えていたらと、苦しい気持ちで涙が止まりませんでした。

私がここまでして医学部にこだわったのは、医学を学ばない人生を選べば一生後悔すると思ったからです。医師を目指したきっかけはいくつかありますが、最も影響を与えたのは、当時まだ幼かった従妹が肺高血圧症という難病になったことです。医療が発達した現代においても治すことができないことにショックを受け、従妹がどんな病気なのか、なぜ治すことができないのかもっと深く知りたいと考えました。また従妹は、女性でありながら薬常時投与のため、胸のあたりに管を通さなければなりませんでした。身体に傷が残ってしまうため、女性としての幸せを諦めかけていました。そんな彼女を見て、病気のことを考慮しながらも、その人らしく生きられるような治療法を医師になって模索したいと心に決めました。進路についてはこれから学びながら最終的に決定するつもりですが、現在は子供の治療に関わりたいという思いから小児科、小児精神科に進むことを考えています。

大学での生活は、勉強が大変な時期も多いですが、良い友人にも恵まれ毎日楽しく過ごせています。友人達とはかなり年が離れていますが、一緒に遊んだり苦しい時には相談し合ったりと、互いに年齢差を忘れてしまいます。友人と共に農家でのバイトも始めました。山口の農家の方々はとても暖かく、農作物をどのように育てているのか丁寧に教えてくださります。他にも野菜を頂いたりバーベキューをさせて頂いたりと、学生の内にしかできないような経験をしています。私は沖縄県から出て生活するのは人生で初めてで、始めは不安でいっぱいでしたが、山口の方々の優しさに救われている気がします。友人や農家の方々もそうですが、親切な方に出会うことが多いです。食材支援の方が、気づきにくい私の怪我に気づいて心配してくださったり、スーパーで忘れ物をした際に店員さんが走って外まで追いかけてきてくださったこともあります。困っていると手を差し伸べてくださる方が多く、山口での生活を快適に過ごしています。山口に来て本当に良かったと思います。私を受け入れてくださった山口大学、そして親切にして下さる山口の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。このように恵まれた環境の中で自分の長年の夢を叶えるべく、勉学に励んでいきたいと思っています。