Interview
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2度目の学生生活で得たこと
2度目の学生生活で得たこと
日頃よりお世話になっております。山口大学医学部6年の高木季代と申します。私は学士編入で山口大学に入学しましたが、先日ようやく国家試験も終わり残すは卒業式だけとなりました。感慨深く思うとともに、学生生活を支えて下さった全ての方々に改めて感謝申し上げます。今回は、医学部に編入した理由と医学部での経験を振り返るとともに、これからについても少し述べたいと思います。
(1)なぜ医学部に編入しようと思ったか
前の大学では化学を学び、研究室配属では分子生物学研究室にお世話になり、大学院前期課程まで進学しました。もともと生命科学に興味があったこともあり、研究内容はDNA修復メカニズムに関する基礎研究に取り組みました。メカニズムを明らかにすることでがん治療の創薬にも繋がるようなテーマでした。近年はがんや自己免疫疾患における分子標的薬の発展が目覚ましいですが、病態メカニズムの解明(基礎研究)が実際の医療(創薬)に結びついている研究を知り、自身も似たような研究テーマに携わったことで医療への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)に興味を持つようになりました。医学研究は多くの人を救うことができ、医者であればトランスレーショナルリサーチはもちろん臨床研究にも携わることができると考え、今後の可能性の幅広さから医学部を目指すことにしました。それからは一時的に研究をお休みして受験勉強を開始、いくつか編入試験を受けたのですが、最後の最後で山口大学から合格通知を頂くことができました。
(2)医学部生を経験して得たこと
入学当初は、試験や実習で忙しい医学部での生活に慣れることに精一杯でしたが、自己開発コースや部活動も経験したことでとても充実した学生生活を送ることができました。その中で得られた新たな気付きが2つあります。
1つ目は専門性を身につけ他職種と対等に意見を交わすことの大切さです。これは3年次に自己開発コースでアメリカへ留学させていただいた経験と、4年次にチーム医療について考えるサマーキャンプに参加した際に学んだことです。例えばアメリカではディスカッションの時に医師も薬剤師も医学部以外出身の理系の研究者も職種に関わらず各々がそのプロジェクトに携わるプロフェッショナルとして責任を持って発言している姿が印象的でした。サマーキャンプでは自分とは異なる職種の立場になって意見を言ってみるワークショップに取り組んだことで、相手の気持ちをより深く理解することができました。前の大学では同じ分野の学生や先生と日々の研究に取り組んでいたので、自分の専門性を自覚することや他職種の立場に立って考えることを意識したことがあまりなく、上記2つの経験は私にとってとても新鮮に映りました。資格上、医師でなければできないこともありますが、医師だからなんでもできることよりも、医師であろうがなかろうが何か1つ専門性を持ちチームで物事に取り組むことでより良い成果を得ることができると学びました。将来チーム医療を実践する上で私も自信を持って意見を言える専門性をしっかり持つとともに、お互いの専門性を尊重し仲間の意見を聞く姿勢を大切にしていきたいと思うようになりました。
2つ目は臨床実習を通して、患者さんの話を聞いて気持ちに寄り添うことを大切にしていきたいと思えたことです。私は研究をきっかけに医学部へきたこともあり、臨床実習まで患者さんと医療者の関係性について具体的なイメージが描けていませんでした。臨床実習で初めて本格的に患者さんと対峙することになったのですが、担当させていただいた患者さん1人1人にその患者さん特有の課題がありました。例えば気管切開を選択されたALSの患者さんが再びご家族とコミュニケーションを取れるようになるためにはどうしたらよいか、咽頭癌の放射線治療で粘膜障害があるが食事を生きがいにしていらっしゃる患者さんはどのような形態であれば食事が可能かなどです。その患者さんが生きてこられた過去とこれからの人生を踏まえて問題を乗り越えるために、患者さんの背景や想いについてご本人やご家族から詳しくお話を伺ったり先生方と話し合ったり論文を読んだりして解決策を考えていく過程はとてもやりがいのあるものだと感じることができました。科学に基づいた医療(Evidence based medicine)も大事ですが、患者さんの人生に基づいた医療(Narrative based medicine)の重要性も身を以て学ぶことができました。
(3)これから
医学部を経たことで、専門性を持ってチーム医療を実践していくこと、及び科学に基づいた医療と患者さんの人生に基づいた医療の両面から患者さんを支えていくことの重要性を知ったことが医学部での最大の収穫であると思います。今後は、患者さんに臨床面からも研究面からも寄り添える医者になれるよう、周りへの感謝を忘れずにこれからも成長を続けていきたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。